金属加工油は工作機械、加工方法によって種類が異なり、
さらに金属の特性によって選定します。
そのうち切削油は主に切削加工で使用されています。しかし、切削加工といってもさまざまです。
まずは金属加工油に
ついて知りましょう!
工作機械と
金属加工油と
加工内容
工作機械名 | 金属加工油名 | 金属加工内容 |
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旋盤 (自動旋盤) |
切削油 | 工作機械の中で数多く用いられている代表的な機種の一つ。 円筒またはバー材の工作物を回転させて加工する機械です。 この機械により外丸削り、面削り、テーパ削り、中ぐり、穴あけ、 突切り、ねじ切りなどの加工が可能です。当社はCNC主軸移動型自動旋盤の不水溶性切削油(サーチングカット)を得意としています。 |
ボール盤 | 切削油 | ドリル工具を回転させて穴あけ加工をする機械。 リーマ仕上げ、ねじ立てなどの加工も可能です。 |
中ぐり盤 | 切削油 | ドリル工具であけられた穴の内面を、より精度よく、 所定の大きさに加工(中ぐり加工)する機械。ドリル加工、フライス加工なども可能。 |
フライス盤 | 切削油 | 旋盤が材料を回転させ工具を固定して加工するのに対し、 材料を固定し、工具を回転させて切削加工する機械。 平面の削り、溝を掘る、四角いブロックを分割が可能。 |
研削盤 | 切削油 | バイトやフライス工具などの切削工具の代わりに砥石車を用いて加工する機械。 加工精度が高く、切削加工より優れた仕上げ面が得られるという特長があります。 |
歯切り盤 | 切削油 | ホブカッタやピニオンカッタ、ラックカッタと呼ばれる工具を用いて歯切り加工をする機械です。 |
マシニングセンタ | 切削油 | 中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立て、リーマ仕上げなど、 連続して多種類の加工できるNC工作機械。 それぞれの加工に必要な工具を自動で交換する機能を備えています。 機械の軸構成によって横型、縦型、門型など各種のマシニングセンタを使用。 近年では、直交3軸と旋回2軸の同時制御により、 さらなる複雑形状の加工を可能にした「5軸制御マシニングセンタ」の普及が進んでいます。 |
ターニングセンタ | 切削油 | 旋盤を複合化したNC工作機械です。 2~3台の工作機械で行う複数の加工を1台に集約。 NC旋盤の機能をより高め、多くの工具を備え、旋削加工の他に工具を自動で交換できる 回転工具主軸を持ち、フライス削り、穴あけなどの加工も可能。 さらに、旋回(割出し)しながら加工が可能な回転工具主軸を備える機械を特に 「(旋盤形)複合加工機」と呼び、急速に普及が進んでいます。 |
放電加工機 | 放電加工油 | 電気による放電エネルギーを利用して加工する機械。 放電を行う電極の形状によって、形彫り放電加工機とワイヤ放電加工機に分けられます。 |
出典元 日本工作機械工業会「工作機械の種類と加工方法」 https://www.jmtba.or.jp/machine/introduction
工作機械と
金属加工油と
その他加工
工作機械名 | 金属加工油名 | 加工内容 |
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プレス機械 | プレス油 |
プレス加工(金型を使い一度に大量生産する) 大量のクッキーの型抜きを一度に作るイメージです。 |
プレス機械 | プレス油 |
せん断加工(金属の板を切断する) シャーリングマシン、タレットパンチプレス、ファインブランキング |
プレス機械 プレスブレーキ他 |
プレス油 | 曲げ加工(金属の板を曲げる) |
プレス機械 | プレス油 | 絞り加工(金属板から容器をつくる) |
油圧式プレス | プレス油 | 張出し成形(金属の板から凹凸ある製品をつくる) |
へら絞り NCスピニングマシン |
スピニングオイル |
スピニング加工(へら絞り:金属の板にローラーをあてて成形する) 身近な部品で有名なもので新幹線の先頭車先端部分や欄干を飾る擬宝珠(ギボシ)。 |
フォーミングマシン | プレス油 | フォ-ミング加工(せん断・プレス・曲げの連続成形) |
鍛造機械 | 鍛造油 |
金属を叩いて圧縮する塑性加工 ネジ溝の転造加工の前段階である、線材を叩いてネジの形にする加工。 |
圧延機 | 圧延油 | 金属をロールで圧縮して伸ばす塑性加工法 |
引抜き加工 | 引抜き油 |
金属を穴から引き抜いて細く伸ばす塑性加工法 パイプ材の場合は内径に金型を入れ外から圧力をかけながら引き抜き、 |
焼き入れ | 焼き入れ油 |
熱処理加工(焼き入れした金属の冷却)油で冷却する焼入れ処理 水と比較すると冷却速度が遅く、硬さムラや不良(焼きワレ)の発生を防止します。 |
防錆 | 防錆油 | 防錆加工(金属の錆の発生を防ぐ) |
切断機 | 研削液 |
円状の切断砥石が回転し、被加工物をわずかずつ削り切っていく精密加工法の一種。 研ぐようなイメージで切断するため切断被加工物に破壊的ダメージを与えません。 |
出典元 はじめての工作機械 https://monoto.co.jp/
切削油とは
被削材となる金属・樹脂の切削加工や研削加工など、機械加工に使われる金属加工油の一種です。被削材(削りとられる側の金属などの材料)と刃物(削り取る側の金属、工具)に切削油を使用すると、双方に多くの効果をもたらします。
特に金属表面の精度が求められ、寸法すなわち公差の安定を目的として用います。不水溶性切削油と水溶性切削油の二種類に大別されます。
不水溶性油剤と水溶性油剤の特徴
不水溶性油剤の特徴 |
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水溶性油剤の特徴 |
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切削油を使うメリット
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切削油の働き(作用)
切削工具接触長さ抑制作用
高品質な切削油は、優れた潤滑能力によって摩擦力を減少させるだけでなく、切屑と工具の接触長さを短く抑制。
この作用により、切れ味が向上します。
乾式切削では、一般的に切込みの5〜6倍も接触して排出しますが、切削油を用いると2〜4倍に。
しかも良質な切削油ほど接触長さは短くなります。
構成刃先の抑制作用
切削油の特長である潤滑能力・冷却能力・反溶着能力の組み合わせ作用により、構成刃先が生じたり消滅したりします。一般的に硫黄系の極圧添加剤は、構成刃先の生成を阻止すると言われています。
潤滑作用
すくい面を潤滑して切れ味よくし、発熱も減少。さらに逃げ面の潤滑で発熱を抑制します。工具寿命延長の役割も担います。
冷却作用
発生した摩擦熱や金属のせん断熱を吸収。被削材を冷却するとともに、工具の硬度低下を防いで摩耗を減少します。加工物の熱膨張による寸法精度のばらつきを防ぎ、仕上げ面精度を維持します。
切削油を用いる
代表的な工作機械
「主軸移動型
自動旋盤」
小さい・細い・長い・量産加工を得意とする 「主軸移動型自動旋盤※」。これこそが、切削油を使用する代表的な工作機械です。回転する被削材の表面を削り取るほか、穴を空けたり溝を掘るといった加工が中心となります。
加工が難しい材質や寸法公差がシビアな加工箇所の工具は、工具寿命が短くなるケースも少なくありません。さらに微振動やブレの影響を受けやすさにより、寸法誤差を起こす可能性も高まります。
そこで切削油の登場です。
最適な切削油の選択により、寸法精度向上や工具寿命の延長など、工具・被削材・工作機械に相乗効果をもたらします。
主な製造メーカーは、シチズンマシナリー株式会社、スター精密株式会社、株式会社ツガミ、野村DS株式会社。
切削油の課題
常温では固く、熱で変性する金属を加工するため、切削油は化学物質で処方されます。
国際的に化学物質の使用規制があり、国内では
化審法、化管法、安衛法、毒劇法、消防法の法規に照らし使用管理しなければなりません。
金属加工現場の安全と作業環境を守るために。
化学物質規制を十分理解し、人に安全で環境に負荷をかけず、リスクを抑えた製品づくりの実現が、
切削油の継続的な課題です。
参考
- 厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課.”労働安全衛生法令”.新たな化学物質管理〜化学物質への理解を高め自律的な管理を基本とする仕組みへ〜.2022-02.
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000884780.pdf(参照2022-11) - 経済産業省製造産業局化学物質管理課化学物質安全室.”化審法の体系”.化審法の施行状況(令和3年度).2022-08-30.
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/information/sekou/sekou_R3.pdf(参照2022-11) - 経済産業省.”化学物質排出把握管理促進法PRTR制度/化管法SDS制度”.化学物質管理.
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/index.html(2022-11)(参照2022-11) - 厚生労働省.”毒物及び劇物取締法”.厚生労働省.
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81094000&dataType=0&pageNo=1(2022-11) - 総務省消防庁.”消防法”.総務省消防庁.
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC1000000186,(2022-11)